特に深い意味は無かった。
 ただ、机の隅から出てきた貰い物のポストカードを、脳裏に浮かんだ顔に宛てて送ってみた。それだけだった。
 よくよく考えてみると、ここ十年間そいつに連絡をとったことは無く、もしかしたら住所も変わってしまっているかもしれない。そもそも、自分の記憶の中の曖昧なそいつの住所がちゃんと合っているのかすら怪しかった。
 十年。
 長いようで短い。でも長い。
 あいつはもう結婚でもしたのだろうか。面倒見が良く、顔も悪くなかったと思う。きっと可愛らしい奥さんと暮らしているに違いない。そういえば、幾つ年上だっただろう。五つ? 四つだったか。もうすぐ四十歳というならば、子供もいるのだろうか。自分のことなんて、もう忘れてしまっているのかもしれない。
 つきりと痛む胸に首をかしげながら、ペンの蓋を取った。
 届くかもしれないし、届かないかもしれないこの手紙。もしかしたらこれが、俺とあいつの最後のコンタクトになるかもしれないな、なんて思ったけれど、だからといってながながと文章を書く気にもなれず、季節の挨拶なんてものも分からないからやめた。そもそも、今の日本の季節なんて俺は知らない。
 とりあえず、今の俺の状況だけ書いて、切手を貼る。朧げな住所を書くと、運よく家の目の前にあるポストへと向かった。
 ぞんざいに手紙を放り込んでから気が付いた。

「あ、俺の住所書いてねーや」







理由なんてありません
(いや、まじで。本当に)







ま、いいか。どうにかなるなる。
(2011/02/07)初出
(2012/01/26)加筆修正