俺だけが /
十年 /
予約 /
名前ペン /
(121104/ヒロ清)
上からの景色なんて俺にはわからない。
でも、俺が立ってるこの場所からじゃないと見えないものもあるって先生が教えてくれた。
上に上にと手を伸ばす先生の足が震えているのは、俺だけが知っている。
俺にだけ見えている。
(121104/川藤+清舟)
何年だ、と問えば、すぐさま応えが返る。
「十年だな」
「そっか」
「我ながらよく放り出さなかったよ」
「なんだそれ」
「お前面倒臭えし」
「うわ、言いやがった」
川藤が吐いた煙が、俺の視界を白くする。
「ま、確り捕まえておくさ。大事な金ヅルだ」
「ははっ、ひっでえの」
(121107/ヒロ清)
「追いかけるから」
今の自分じゃ並べない。解っているから何も言うなと、左手で先生の口を塞いだ。
「絶対すぐ追いつくから」
掌と一緒に約束を押し付けて。
「少しだけ待ってて」
全速力で追いかけるから。
そう告げて、塞いだ手の上から口付けた。
ここは予約させて。
(121107/ヒロ清)
男が一人倒れていた。
傍から見たらまるで一大事。慣れた自分には日常茶飯事。安心しきったその寝顔に、落書きでもしてやろうかと溜息を吐いた。
机に置かれた彼の墨では、水に濡れたら消えてしまう。筆箱に入っている油性ペンで彼に名前を書いたなら、自分のものになるのだろうか。