不意に誰かに呼ばれた気がして、ルルーシュは後ろを振り向いた。
しかし、振り向いた方向には誰もおらず、唯いつもの見慣れた風景がそこにはあった。風に揺れる木々、珍しく照明が消されているクラブハウス、先程まで自分もいた綺麗な校舎。一通り見渡してみたが特にこれといった反応は無く、何だ勘違いか、と踵を返した。この時間帯になると、流石のアッシュフォード学園でも人通りは少なく何故か淋しいものに思えた。
後少しで目的の場所へ着く。そう思いゆったりと歩みを進めていると、今度ははっきりと声が聞こえた。
「ルルーシュ!」
もう一度振り返ると、そこには息を切らした生徒会長の姿があった。
「どうしたんですか、会長」
「やぁっと見つけた!電話にも出ないから心配しちゃったじゃない」
「電話?」
ポケットから携帯電話を取り出して見ると、ディスプレイには不在着信16件の文字。全く気が付かなかった。詳しく見てみると、生徒会のメンバーが代わる代わる電話をしてくれていた事が分かった。
「すいません。全く気が付きませんでした」
「珍しいわね。いつもは3コールで出るのに」
「ええ、自分でも驚きです」
ルルーシュが苦笑を浮かべながら言うと会長もクスリと笑い、ポケットを探って自分の携帯電話を取り出した。素早く番号を押して何処かへ電話をかける。
『会長!?ルルーシュ見つかった!?』
出るが速いか携帯電話から聞こえてきた声は、リヴァルのものだった。
携帯電話を耳に当てていた会長も思わず耳から離してしまう程の大音量。リヴァルの声はルルーシュにも届いていた。
「見付かったわよー、今から生徒会室連れて行くから先行って待ってて」
『了解しましたー!シャーリー達にも伝えておきます!』
「頼んだわ!」
そう言って電話を切ると、会長はルルーシュの方へと向き直った。
「皆、心配してたのよ?」
「……え?」
「今日1日全然元気が無かった、って皆が言ってたの」
「元気が、無い……?」
「そ。ナナリーとロロ、シャーリー、リヴァル、スザク君。あとカレンとジノそれとアーニャも。ニーナも声には出さないものの凄く心配してたみたい。あと、私も」
会長はにっこり微笑むと、くるりと回ってルルーシュに背を向ける形になった。
歩き出した会長の後について、ルルーシュも歩みを進める。会長は自分のペースで歩きながらも、話を続けていた。
「我らが副会長の一大事とあっては、他のメンバーが黙ってる訳にはいかないでしょう?」
会長はピタッと立ち止まると、顔だけをルルーシュの方へ向けて満面の笑みを浮かべた。気が付いたら、もう既に生徒会室の扉の前まで来ていた。
「だからね、今日は宴会なのよ!」
会長がそう言うと同時に、唯一電気が点いていた生徒会室の扉が開いた。
部屋の中には9人の仲間の姿があった。スザクの腕の中にはアーサーもいるではないか。ルルーシュが呆然と立ち尽くしていると、ナナリーとロロが駆け寄ってきた。
「お兄様!早く此方へ」
「兄さんの為に生徒会の皆で用意したんだよ!」
二人に引き摺られるようにして中へ入ると、10人の笑顔が迎えてくれた。
リヴァルに握らされたグラスを手に、ルルーシュは照れたような笑みを浮かべて小さな声で、ありがとう、と呟いた。






何で、なんて、そんなこと
(決まっているじゃないか。)





憧れた、平穏な学園生活。
(2009.01.29)
(2010.09.27)UP
(title:群青三メートル手前)