背中 /
君の好み /
うそつき /
左肩 /
好きなところ /
あいらぶゆー /
大切 /
殺し愛 /
ひとりぼっち /
約束
(121105/カヅサとナギ)
細い背中がどこか寒そうに見えて、無意識のうちに手を伸ばしていた。気付いて慌てて引っ込めて、自分の冷たい指先をきゅっと握り込む。首まで下ろされている臙脂色のバンダナを、後ろから引っ張った。
「ナギ君」
「カヅサ?」
この手であの背中を押す勇気は、まだなかった。
(121105/カヅサとナギ)
「アッサムとセイロン、どっちがいい?」
並べられた二つの缶に、見向きもせずに言った。
「ダージリン」
「アッサムとセイロンなんだけど」
「ダージリン」
「……仕方ないなぁ」
(あるのか)
そう零しながら奥の棚へと向かう背に、ありがとうなんて言わないけれど。
(121105/カヅナギ)
「駄目だよ、僕なんかの言葉を信じたりしちゃ」
薬品の臭いが鼻をつく。そう口にする大人は、ヘらりと笑った。返す言葉はなかった。愛想笑いも返さない。
(駄目だよ、俺なんかの言葉も信じたりしちゃ)
嘘つきふたり。
(121105/カヅナギ)
マグカップに注がれた黒い液体が、微かに波を立てる。珈琲の香りを纏った吐息をゆっくり吐き出した。
(やっぱり)
左に視線をやれば、バンダナを下げて瞳を隠した青年が、ソファの背凭れに体重を預けて眠っている。
(凭れ掛かってこないんだよねぇ)
それくらい、構わないのに。
(121105/カヅナギ)
どうだ、なんて聞かれても、はっきりしたことは何一つ言えなくて。全部ってわけでもなくて、具体的にどうと言えるわけでもない。言われて浮かぶのは何故か白い背中だけれど、これを言っても仕方がない。だからこう言う。
「んー、どうだろ」
決して、はぐらかしているわけじゃない。
(121106/クラA)
「好き、かな」
告げられた言葉に、声が出なかった。
「愛してる、の方がいい?」
「一体どうした」
「あんたに言ってるんだけど」
しれっと口にする教え子に、思わず閉口する。
「……急に言われてもな」
「じゃあ待つ」
そう言ったきり黙り込んだ。
(……そういうことじゃない)
(121106/カヅサ←ナギ)
例えば。
目が合ったとき、不器用に細められる瞳。
例えば。
声を掛ければ、不自然に揺れる白い肩。
例えば。
俯いた顔に、躊躇いがちに伸ばされる手。
例えば。
別れ際に、ぎこちなく浮かべられた笑顔。
例えば。
……それらを心地よいと感じること。
(大切ってなんですか)
(121107/クラA)
「何を考えている」
「あんたのことを」
「それは喜んでいいのか?」
「当たり前だろ?」
「お前は私を嫌っていると思っていたのだが」
「そんなわけない」
カードが舞った。
「愛してるよ? 隊長」
あんたの血で溺れ死ねたら、もう生き返らなくていい。
そう思える程度には。
(121107/カヅサ+ナギ)
追いかけていた背中が、もっとあったような気がするのに。
残っているのは、たったひとつだけ。
白衣の裾を翻す、どこか頼りなくも見える背中。意外と鍛えられているそれが、どこか寂しげにみえるのは、気のせいではないはずだ。
彼も恐らく気付いている。
だって、ひとりになってしまった。
(121108/クラA)
何が足りない?
約束が欲しいなら、いくらだって約束する。
誓いが欲しいというなら、あんたが望むものに誓う。
目に見える証が欲しいなら、あんたみたいに皮膚に傷を残そうか。
その身をもって確かめたいなら、あんたのその手で刺せばいい。
だから信じて。僕は死なない。
あんたより先には、絶対に。