2012/11/05〜2012/11/08

背中君の好みうそつき左肩好きなところあいらぶゆー大切殺し愛ひとりぼっち約束








(121105/カヅサとナギ)
 細い背中がどこか寒そうに見えて、無意識のうちに手を伸ばしていた。気付いて慌てて引っ込めて、自分の冷たい指先をきゅっと握り込む。首まで下ろされている臙脂色のバンダナを、後ろから引っ張った。
「ナギ君」
「カヅサ?」
 この手であの背中を押す勇気は、まだなかった。






(121105/カヅサとナギ)
「アッサムとセイロン、どっちがいい?」
 並べられた二つの缶に、見向きもせずに言った。
「ダージリン」
「アッサムとセイロンなんだけど」
「ダージリン」
「……仕方ないなぁ」
(あるのか)
 そう零しながら奥の棚へと向かう背に、ありがとうなんて言わないけれど。






(121105/カヅナギ)
「駄目だよ、僕なんかの言葉を信じたりしちゃ」
 薬品の臭いが鼻をつく。そう口にする大人は、ヘらりと笑った。返す言葉はなかった。愛想笑いも返さない。
(駄目だよ、俺なんかの言葉も信じたりしちゃ)
 嘘つきふたり。






(121105/カヅナギ)
 マグカップに注がれた黒い液体が、微かに波を立てる。珈琲の香りを纏った吐息をゆっくり吐き出した。
(やっぱり)
 左に視線をやれば、バンダナを下げて瞳を隠した青年が、ソファの背凭れに体重を預けて眠っている。
(凭れ掛かってこないんだよねぇ)
 それくらい、構わないのに。






(121105/カヅナギ)
 どうだ、なんて聞かれても、はっきりしたことは何一つ言えなくて。全部ってわけでもなくて、具体的にどうと言えるわけでもない。言われて浮かぶのは何故か白い背中だけれど、これを言っても仕方がない。だからこう言う。
「んー、どうだろ」
 決して、はぐらかしているわけじゃない。






(121106/クラA)
「好き、かな」
 告げられた言葉に、声が出なかった。
「愛してる、の方がいい?」
「一体どうした」
「あんたに言ってるんだけど」
 しれっと口にする教え子に、思わず閉口する。
「……急に言われてもな」
「じゃあ待つ」
 そう言ったきり黙り込んだ。
(……そういうことじゃない)






(121106/カヅサ←ナギ)
 例えば。  目が合ったとき、不器用に細められる瞳。
 例えば。  声を掛ければ、不自然に揺れる白い肩。
 例えば。  俯いた顔に、躊躇いがちに伸ばされる手。
 例えば。  別れ際に、ぎこちなく浮かべられた笑顔。
 例えば。  ……それらを心地よいと感じること。
(大切ってなんですか)






(121107/クラA)
「何を考えている」
「あんたのことを」
「それは喜んでいいのか?」
「当たり前だろ?」
「お前は私を嫌っていると思っていたのだが」
「そんなわけない」
 カードが舞った。
「愛してるよ? 隊長」
 あんたの血で溺れ死ねたら、もう生き返らなくていい。
 そう思える程度には。






(121107/カヅサ+ナギ)
 追いかけていた背中が、もっとあったような気がするのに。
 残っているのは、たったひとつだけ。
 白衣の裾を翻す、どこか頼りなくも見える背中。意外と鍛えられているそれが、どこか寂しげにみえるのは、気のせいではないはずだ。
 彼も恐らく気付いている。
 だって、ひとりになってしまった。






(121108/クラA)
 何が足りない?
 約束が欲しいなら、いくらだって約束する。
 誓いが欲しいというなら、あんたが望むものに誓う。
 目に見える証が欲しいなら、あんたみたいに皮膚に傷を残そうか。
 その身をもって確かめたいなら、あんたのその手で刺せばいい。
 だから信じて。僕は死なない。
 あんたより先には、絶対に。