この世界を見下ろし嘲笑うかのような、青く透き通った美しい青空。何処までも見通せているようで本当は何も見えていないのではないか、なんて自分らしくない事を考えてしまう。
言葉の通り雲一つ無い青空はとても綺麗なのだが、何処か淋しげにも見えてしまう。
そういえば、あの人が居なくなってしまったのもこんな青空の日だった。
綺麗な青空を見上げた時に真っ先に思うのは、いつもこれだ。しかし、思い浮かんでくる思い出は何も悪いことばかりではなかった。
入江の野郎が教えてくれた秘密の穴場に行って村塾の皆で花見をした日、隣の道場の奴らに喧嘩を吹っ掛けられてまるで一大事と言わんばかりの大喧嘩になってしまった日、桂と高杉と3人で悪巧みして見つかって村塾の廊下でずっと正座させられていた日。そして、先生に拾われた日。
そっと、優しく差し伸べられた掌、綺麗に整っている微笑み、心地よく耳に響く声。先生の背景には、目に痛い程の美しい青空があった。
こうして思い返してみると、本当に先生と奴等のことばかりだ。
どうしようもない日々だったけど、楽しくて面白くて、毎日が幸せだった。
当たり前のように笑い合って、当たり前のように喧嘩して、当たり前のようにいつも一緒にいた。懐かしい、遠い日々。
先生の講義なんてまともに受けた事すらなかったし、受ける気も無かったけれど。あの人の暖かい手が、心和む微笑が、優しい声が好きだった。
「……遠いなぁ……」
届かない。もう届かない。
胸を締め付けられるような思いに苛まれながらも、青く透き通った空へと手を伸ばした。届く筈が無い、と分かっていながらもいつもいつも縋るような思いで手を伸ばす。あの頃に比べて随分と大きくなった筈の身長でも、届かないことに変わりは無かった。足の先に力を入れて背伸びをしてみても、矢張り手は届かなかった。
何だかそれが彼の人のように思えて、悲しみだけが込み上げてきた。
力無く落ちた手を握り締めて、銀時はもう一度空を見上げた。
もう、思い出には届かない
(離れても行かないし、近付いても来ないのに)
青い空と彼の人、見掛けと距離のはなし。
(2009.03.14)
(title:群青三メートル手前)