「黒子っちは、卒業後の進路はどうするんスか?」
駅前のマジバで、偶然再会した黒子と共に少し遅い昼食を食べながら黄瀬は問うた。相変わらず黒子は、バニラシェイクしか頼んでおらず、黄瀬の前にだけバーガーのセットが置かれている。店内は客も多く、ざわざわと騒がしい。
「僕は大学進学です。黄瀬君はどうするんです?」
「俺も大学進学っス。大学でもバスケ、しようと思って」
黄瀬の言葉に、黒子は僅かに頬を緩めた。黒子はテーブルの上の、汗をかいたバニラシェイクを手にとって、一口だけ飲んだ。
黄瀬の前のポテトは、既に半分以上が胃袋へと消えていたが、平生の黄瀬にしては遅いペースである。黄瀬は、黒子のバニラシェイク同様に汗をかいているコーラを飲むと、ポテトをもう一本口に運んだ。
それから、ポツポツとお互いの高校のことやチームメイトのこと、大学の事を話した。時間はあっという間に過ぎ去り、気が付けば、もう間もなく日が沈む時刻になっている。
「……もっと、黒子っちとバスケしたかったな」
黄瀬が、ポテトを摘みながら小さく零した。
「結局黒子っちと俺が一緒にプレイできたのって、帝光の時ちょっとと高校最初の頃の火神と三人でのストバスだけっスもんね。もっと黒子っちのパス受けたかったなー……」
黄瀬の言葉を聞いた黒子は、僅かに口を尖らせる。
「何ですか、それ。さも、もう出来ないかのような言い方をしますね」
黒子の言葉に、黄瀬は苦笑を返した。
「……俺の夢はさ。黒子っちと火神っち、青峰っち、緑間っちと……そうっスねぇあとは、ああもちろん紫原っちとか赤司っちも。……このみーんなでまたバスケやることなんスよ。……ほんと、夢のまた夢って感じっスけど」
帝光にいた時とは違うバスケが今の俺たちなら出来ると、確信を持って言えた。
コーラを飲み干して、空のカップをトレイに置くと、かたんと小さな音をたてる。黄瀬の表情には、明らかな諦めの色が見えた。
「諦めるんですか?」
黒子の言葉に、黄瀬は息をのんだ。真っ直ぐに黄瀬の目を見つめ問う黒子から、黄瀬は目を逸らすことが出来なかった。
「黄瀬君は、諦めるんですか?」
「だって、」
その程度の夢ですか、と目で問う黒子に、黄瀬は言葉を詰まらせた。
(そんな夢みたいな話)
黒子は首を竦め、ああそうだ、と言いながら黒子は座席から立ち上がった。空になった紙コップを手にしているところからして、片付けて帰るつもりなのだろう。黄瀬はゆっくりと黒子を見上げる。
僅かに細められた黒子の目は、何処か嬉しげに見えた。
「……黄瀬君の夢、半分は叶うと思います」
「……え?」
それではお先に、と言って黒子は去って行ってしまう。黄瀬はただ、呆然とそれを見ていることしか出来なかった。
願わくは、もう一度貴方と
(この道を歩きたいのだと)
そう思っているのは君だけじゃないんです
(2010.12.16)
(2012.05.07)大幅に加筆&修正