2013/02/14〜

内緒一陣の風遠く見上げて連れて行ってMidnight








(130214/兎→虎)
 だめ、と低く抑えた声で告げると、彼はその骨張った右手で僕の口を塞いだ。左手の人指し指をそっと立てて、少し尖らせた己の唇に軽く当てる。
 すぅ、と僅かに息を吸い、どこか楽しそうに眼を細めると、しぃ、と吐息のような声で言った。薄く開いた唇から覗く白い歯に、僕の胸が跳ねた。
(言っちゃだめ)






(130302/空→虎)
 君にはいつか話そう。私がヒーローになった理由を。
 幼い私の手を引いて無邪気に笑ったあるヒーローが、私の心に一陣の風を連れて来たのだと。
 青い光なんてなくても、空も飛べてしまうような、あの気持ち。私は生涯忘れはしない。
 君が連れてきたあの風が、私をここまで連れてきたんだ。






(130302/空←虎)
 たまに、あいつが羨ましくなる。
 俺には、空は遠い。
 上を見上げればいつだってそこにあるのに、手を伸ばしても届かない。友恵に一番近いところ。薬指の約束はいつだってそこにある。憧憬や切望、愛も憎悪もごちゃまぜにした感情で俺が見上げるこの空を、あいつは今日も笑顔で飛ぶのだ。






(130302/空→虎)
 君が苦しげに空を見上げる時、私を見つける度に微笑むことを知っている。また飛んでるよ、と笑ったあと寂しげに溜息を溢すことも。
 いつか、空を見上げても悲しくなくなる時が来ればいい。笑って空を見上げて欲しい。
 だから飛ぶ。そして叫ぶ。
「やあ!」
 君に私を、見つけてもらう為に。






(130302/空→虎)
(空飛べんのか! すげえなお前!)
 デビューしたばかりの自分と、彼とのファーストコンタクト。そう言った彼の瞳が、一瞬細められたのを私は見ていた。
 彼の薬指を見れば、大方の予想はついた。
(おれも、つれていってくれ)
 その一言をずっと待っている。
 君となら、何処まででも。






(130314/兎虎)
 深夜に、貴方と二人きりで話すあの時間が好きです。楓さんも眠りについて、起きているのは二人だけ。僕の他愛無い話を、眠い眠いと言いながらも最後まで聞いてくれる貴方が好きです。いつもより少しだけ声を潜めて、くつくつと笑う声が好きです。
 朝が来たら貴方はもう父の顔。
 せめて、今だけ。