長く艶のある漆黒、癖のある焦げた茶色、ふわりとした光り輝く銀。
常に自分の視界をちらついていた色だった。
気が付けばいつも傍に在る邪魔で邪魔で仕方がない存在の筈なのに、此等が自分の前から消えてしまうことを恐れている自分がいる事が苛立たしかった。自分の中に、自分のものでない感情が存在しているようで嫌だった。其れが、自分が希っていることなのだと知ったのは、一体いつの話だっただろうか。

確りと手に持っている刀を鞘へと仕舞い何でもないように周囲を見渡すと、自分の周りには、やはりあの三つの色が存在していた。
どいつもこいつも、しぶとく生き残ってやがる。皆、悪運だけは強いらしい。
しかしながら、自分も毎度毎度奴等と同じように生き残っているのだから全くもって人の事は言えないのだが。
再度確認するように周囲を見渡して、奴等の色を見つけては安堵している自分が何だか可笑しくて、思わず苦笑を漏らした。日頃は鬱陶しくて仕方がない奴等も、居ないよりは居た方がいい。何と言ったか……ああそうだ。枯れ木も山のなんとやら、だったか。
しかし、頭の中ではそう思い込もうとしていても心の奥底には、もっと別の思いがあるという事を自分でも理解していた。
やはり、本心は隠しようがないのだな、と改めて思い知った。
屍が転がり、血の臭いに溢れている戦場でも、奴等がいると思うとそれだけで少しはマシなものに思えてしまうのだから本当に末期だな、と自分でも思う。
「おいチビ杉!早く来い!」
自分を呼ぶ聞きなれた声に、思わず口元に笑みが浮かんだ。この声を心待ちにしていたという事をこの道の先で待っている奴等だけには何が何でも知られたくはなくて、喜びの色に染まっている声を誤魔化すかのように、少しだけ大きめに声を上げた。
「ァあ!?うっせェぞ天ぱ!」
自分がそう口にしたとき、体は既に駆け出していた。
仮令滑稽だと嘲笑われようと、共に歩き続けることが出来たなら、と柄にも無くそう思った。






刹那によぎるその想い
(いつか、忘れられてしまう感情)






これまでも。そして、これからもそうだと思っていた
(2009.04.29)
(title:群青3メートル手前)