ふわふわとした、心地良い感覚が体を覆っていた。
少しずつ何処かへ引き戻されて行くかのような感覚に、自分が眠っているのだと頭のどこかで実感していた。何処からか小さく物音が聞こえた気がしてゼロは、否、スザクはゆっくりと目を開けた。
机に突っ伏していた体を起こして力任せに右手で目をこすると、霞んで見えていた景色が少しだけはっきりとする。他人の気配が無いかどうか部屋を見渡すと、見慣れている筈の部屋に、何故か少しばかり違和感を抱いた。しかしそれを無理矢理頭の隅に追いやり、取り敢えず現在の時間を確認しようと顔を上げる。時刻は八時を五分程過ぎたところだった。
元々今日すべき仕事など在って無いようなものだった為、今からでもどうにか間に合うだろう。そう思ったスザクは渋々ながらも椅子から立ち上がった。取り敢えずコーヒーでもいれて体に残っている僅かな眠気を覚まさなければならない。
ふと、自分が先程まで突っ伏していた机に目をやると、机の隅には、綺麗にたたんだ黒いマントが仮面と共に置かれていた。驚いて自分の体を見ると、確かにマントが掛かっていなかった。
おかしい。
自分には、マントを脱いだ記憶など存在しないのに。
スザクは必死に思考を巡らせ、息を呑んだ。
自分が居眠りをしていた間に、誰かがこの部屋に入り込んだのだろうか。自分にはもしも、そうならば大失態である。確実に自分の顔を見られていることになる。一先ず深呼吸をし、マントの上に鎮座している黒い仮面を恐る恐る手に取った。
仮面の下には、二つに折られた白い紙があった。スザクは仮面を横に置き、ゆっくりとそれに手を伸ばした。
白い紙に、たった一行。

―――もう少し上手く演じたらどうだ―――

手が震えた。
比較的薄い筆圧の綺麗な筆記体の文字。見覚えのある筆跡と、どこか人をからかうような文章。スザクの脳裏に浮かんだのはたった一人の人物だった。
「……ルルーシュ」
慌てて辺りを見渡すと、目が覚めた時に感じた違和感の正体がやっと分かった。
片側だけ業とらしく開いた窓と、其処から入り込む風に揺れるカーテン。常に閉めたままであった筈の窓は開き、同じく常に閉めたままであった筈のカーテンも片側だけ綺麗に纏められ、もう片方はひらひらと風に揺れていた。
急いで窓に駆け寄り、勢い良く開け放った。
下を見下ろしても下の階の窓と地面が見えるだけで、もう気配は無い。

「ルルーシュっ!!」

震える咽喉から絞り出した声に、やはり返事は無かった。








嘆くな、友よ
(プレゼントは希望と絶望。喜んでくれるかい?)









ルルーシュ、ルルーシュ。ルルーシュっ!
(2009.05.24)